反転攻勢の予感漂う快勝・ブラックブルズ

日本ハンドボールリーグ第5週1日目

飛騨高山ブラックブルズ岐阜(28-15)大阪ラヴィッツ

ここまで雌伏の時期を過ごしてきたブラックブルズが目覚めそうだ。

飛騨高山ブラックブルズ岐阜

日本リーグに参加して6シーズン目。プレーオフにあと1勝と手が届きそうなシーズンもあるにはあったが、ほとんどが下位に沈んでいたブラックブルズ。今シーズンもここまで4戦全敗と片目を開くことができていなかった。しかし20日に行われたホーム戦では序盤から相手を寄せ付けない快勝でシーズン初勝利。しかも今後に大きな期待を抱かせる勝ち方を見せた。

前シーズン個人四冠イ・ミギョン選手

そのカギとなったのは新加入のイ・ミギョン選手。昨シーズンの最優秀選手など個人四冠に輝いた実力者は、この試合から出場が可能となりいきなり10得点。「高山での初の試合だったから最初は少し緊張した」と、まだまだアクセル全開ではないというものの圧倒的なプレーでチームをけん引した。

シュートを打つイ・ミギョン選手

ミギョン選手の良さは得点だけではない。「視野が広いので良いパスが出てくる」とこの日6点を挙げた宮崎亜紀穂選手が言うように、他の選手を使うプレーも効果抜群。相手が自分を厳しくマークにくるとすかさず味方選手をうまく使い得点につなげた。この試合では得点者が9人とこれまでのブルズにはあまりなかった展開。地元出身の佐藤茜選手はうれしいリーグ戦初得点を挙げた。

リーグ初得点の佐藤茜選手はOGからの祝福で感極まった

連携も深まっていることが容易にわかるプレーが「スカイプレー」。バスケットボールで言う「アリウープ」的なシュートだが、味方とのアイコンタクトで意思の疎通ができていなければ仕掛けることもできない。しかしミギョン選手から和田育子選手へ、池之端弥生選手からミギョン選手へなど、何度もトライするシーンが見られた。

守備の要・池之端弥生選手

ブラックブルズの一番の特長であるディフェンスも機能していた。相手の速攻を体を張って止めるシーンや鋭い読みでインターセプトするシーンもあり決めさせない。GKの田口舞選手や菊池麻美選手も好セーブを連発して15失点に抑えた。「池之端が体を張って頑張ってくれるから止められるし、自分が不調な時でも菊池が止めてくれるからチームとしてのディフェンスができる」と田口選手。もともと守備には定評のあったチームだが、攻撃の活性化とともによりその特長が生きてきそうだ。

それでも山川由加監督は「内容的には良くなかった。全員で守り全員で攻撃するのがブルズだが、大量のリードでしっかり戻らないところもあったし、もっと速攻もスピードアップできた」と厳しさをみせる。しかしそれはクラブ初のプレーオフ進出を現実として見据えているからこその厳しさだ。

チーム2位の6得点・宮崎亜紀穂選手

去年までと格段に違ったのはパスの精度。これまではシュート前のパスミスや攻めのスイッチを入れるパスでミスが多く、攻撃にノッキングを起こしてしまうことが多かったが、この日の試合は大幅に改善。山川監督はその要因を「パスワークやフィニッシュにつながるパスの練習はしっかり積んできた。ミギョンのパスワークの良さを生かしてほかの選手でも得点がコンスタントに取れるようにしたい」と言う。

キム・ウンヘ主将

またこの試合は「1300人プロジェクト」と銘打って大キャンペーンを展開。その成果もあって会場は満員となった。キャプテンのキム・ウンヘ選手は「ホームの初試合でいろんな思いがあった。ミギョンが出られたこともうれしいし、こんなにたくさんの人が来てくれると思わなかった。声援も大きくてそのおかげで勝てた。選手たちも自信になったと思う。明日も頑張りたい」と笑顔を見せた。

イ・ミギョン選手という大きなピースを得て劇的な変化を遂げたブラックブルズ。上位チームとの対戦でどうなのか、相手チームの対策が進んだ時にどうなのか、まだまだ課題はあるがひとまず大きな成長と期待感を抱かせた。目標は上位4チームに入りプレーオフに進出すること。「今シーズンこそやらないといけない」と選手たちも気合に満ちている。まずは21日の試合で連勝を飾ること、そして上位との対戦で真価を発揮し悲願のプレーオフへ進みたい。

 

 

 

大逆転による敗戦を今後の糧にせよ

 

岐阜スゥープス68-76埼玉ブロンコス

子供たちと手をつないで登場

バスケットB3リーグ、ファーストステージ第3節2日目。

前日のゲームで歴史的なホーム初勝利を飾った岐阜スゥープスだが、この日は先行するものの、相手の猛攻の前に粘り切れず、悔しい逆転負けを喫した。

第1クォーター(岐阜18-16埼玉)

前日の勢いのまま、立ち上がりから攻勢に出たスゥープス。伊藤良太のシュートで口火を切ると三浦正和のジャンプシュートや杉本慎太郎の3ポイントシュートなどで得点を重ねる。しかしファウルが多く相手にフリースローを与えてしまい、思うように点差を広げられなかった。

第2クォーター(岐阜20-10埼玉)

伊藤良太選手

残り5分のオフィシャルタイムアウトまでは一進一退の攻防。しかしそこから三浦、園田大祐の連続得点、またショットクロックぎりぎりで伊藤がシュートを決めると、さらに伊藤はブザービートも決めて、スゥープスは一気にリードを12点に広げた。

第3クォーター(岐阜21-27埼玉)

杉本憲男選手

杉本憲男や園田の3ポイントシュートで得点を重ね、マイケル・アリソンも空中戦を制し、残り2分36秒でリードはこの日最大の17点差に。しかし1分を切ったところで相手に連続で3ポイントを決められると、あまりにも厳しいレフェリーの笛でビンゴ・メリエックスがテクニカルファールを取られる。余分なフリースローを決められ、あっという間に6点差となった。

第4クォーター(岐阜9-23埼玉)

ナイスプレーを見せるもファウルの判定に・・・

審判のあいまいな笛に対応できずに(せずに?)リズムを完全に失ったスゥープス。前日は追いつかれても修正できたが、この日はチームの柱である田中昌寛がケガで出場を見合わせたこともあり、立て直すことができない。第3Qですでに4つのファールを犯していたマイケルも「ファールでプレーが難しくなってしまった」と本領発揮とはいかず、最大17点あったリードをふいにしてしまった。

ただシーズンの序盤にこうした課題が出たのは、逆に良かったのかもしれない。リズムを失ったときに取り戻す役、ゲームを落ち着かせる役割を誰が担うか、またはコートに出ている選手がいかに冷静にプレーを進めるか、そしてどう勝ち切るか。この敗戦をバネに成長していくことが大切になる。

コメント:梶本健治アシスタントコーチ

「相手の3ポイントが決まった後に、攻撃のリズムが取れなかった。試合は最後の5分間をどれだけ自分たちのペースにするかが重要。ここまで6戦を戦い、プロとして戦っていける手ごたえは得た。問題はコンディション。経験のない連戦の疲れをどう取り除くかがポイントになる」。

マイケル・アリソン

マイケル・アリソン選手

「試合はいい展開で進めたが、4Qで相手のリズムになったところで反応できなかった。17点のリードでリラックスし過ぎた。ホームのブースターの反応も良かったし感謝している。自宅の近くには寿司屋もあるし、ココイチもあるし、改めて岐阜が大好きだと思った」。

伊藤良太

「2連勝できなかったことがすごく悔しい。前半の勢いを保てず相手にのまれてしまった。ポイントガードとして流れを変える役割をすることが個人の課題。前評判では『1勝もできないのでは』と言われたがそれをバネに変えた。みんなやれるという自信を感じている。今日は負けたがチームの雰囲気は悪くない。短い時間だが課題を修正して次の試合で全力を出したい」。

GIFU-SWOOPSホーム初戦で歴史的勝利を飾る

 

記念すべき日のウエルカムボード

SWOOPSを取材し始めて6年になる。その当時はまだプロ化の話など何もなく、クラブチームの全国大会で優勝することを目指していたチームだった。ただひたすらにバスケットボールに打ち込む姿に心打たれた。

しかし実績を重ねるうちに周囲が動き始める。「SWOOPSをBリーグに」。みんな野心を隠し持っていたのだろう。チームは一気にプロ化に舵を切る。その思いを細田英樹社長と田中昌寛に聞いたのは2016年12月。そこから並大抵ではないさまざまな苦労を乗り越え、ついにこの時が来た。

2018年10月13日、自分の目の前にはプロチームの選手としてB3のコートに立つメンバーが。取材を始めた当初から見ている顔も多い。選手たちにとっては遠かった夢をかなえた瞬間。そして自分が選手たちに勝手に乗せた夢がかなった瞬間だった。

この日全体を残しておきたいので少し時間を巻き戻す。

大野ミニバス対池田ミニバス

会場に着いたのは、ちょうどエキシビジョンで大野ミニバスと池田ミニバスの試合が始まったところ。懸命にボールを追う姿がほほえましい。観戦している親御さんたちからの声援が飛ぶ。

明るい表情でウォームアップ
田中昌寛選手

17時30分、1回目のアップが始まる。思いのほかリラックスした表情でシュートを放つ選手たち。すると自分をSWOOPSに夢中にさせた田中昌寛と目が合った。重ねた年輪がそうさせるのか表情に余裕がある。やってくれそうな予感がした。

名前はSPARKYに

 

 

 

 

 

 

18時00分、マスコットキャラクターが登場。名前が「SPARKY」と発表される。会場の演出などスタッフの準備は大丈夫だろうか。プロの試合、特にバスケットは会場を盛り上げる演出がファン拡大のもうひとつの生命線。今後の集客に大きく関わってくる。

FC岐阜の試合から転戦してきたブースター

18時15分、練習再開。ふと外に出ると試合を終えたばかりのFC岐阜のサポーターがSWOOPSのブースターになって来場、声をかけてくれた。この日逆転勝利を収めたFC岐阜から勝ち運をもらいたい。

そしてMCが登場しコールの練習。クラブも初めてならお客さんも初めて、まだまだ声が小さい。だが初めてだしそれはしょうがないこと。MCもチアも一生懸命盛り上げようと必死にブースターをリード。だんだん会場が温まってきた。

チアも懸命に盛り上げる

TIP OFFイベントではなんと来賓のフリースローが決まってびっくり。そしてその時間がやってきた。

 

19時00分、TIP OFF。SWOOPSのスターターはビンゴ・メリエックス、田中昌寛、犬飼啓介、伊藤良太、杉本慎太郎。

第1クォーター(岐阜22-12埼玉)

TIP-OFF

立ち上がりはやや堅かったか3本のシュートを落とし、埼玉ブロンコスに4点のリードを奪われる。それでも2分16秒キャプテン杉本慎太郎がチームを落ち着かせるカットインからのレイアップシュートを決めると、田中が得意の角度からの3ポイントシュート、三浦正和のシュートがファールも誘い3点追加。マイケル・アリソンのリバウンドや積極的な守備も奏功して得点を重ね第1クォーターは22-12とSWOOPSが圧倒した。

第2クォーター(岐阜16-17埼玉)

DFで好プレー連発のマイケル・アリソン選手

開始早々10秒で園田大祐がシュートを決めたSWOOPS。しかし身長211センチの埼玉ジョシュア・クロフォードの高さに連続して5点を奪われる。しかしビンゴとマイケルのコンビネーションなどでリードを取り戻すと、相手の3ポイントが決まった直後に杉本憲男が3ポイントシュートでお返し。マイケルのシュートブロックも光り、38-29と9点のリードで前半を終えた。

ハーフタイムショー

ハーフタイムショーは岐阜出身のアーティストMEGAHORNさんのノリノリのライブ。簡単な振り付けがある曲で会場がさらに一つになった。

第3クォーター(岐阜21-21埼玉)

杉本慎太郎選手
伊藤良太選手

「ハーフタイムのミーティングに問題があったのかもしれない。少し気の抜けたところがあった」と楠本和生ヘッドコーチが語ったように、立ち上がりから埼玉にゲームの主導権を奪われる。素早いプレスにボールを失い、ディフェンスファールの判定も厳しく立て続けに失点を重ねた。2分49秒でついに9点差をひっくり返され、さらにリードを広げられる。ここで精神的な強さを発揮したのが杉本慎太郎。「とにかくかき混ぜろと監督に言われて全力を出して走った」とレイアップを決めると、それに呼応したのがチームの支柱田中。5分01秒に3ポイントシュートを決めて再逆転すると、伊藤が得意のディフェンスから連続得点。ビンゴもアウトサイドからの3ポイントシュートとインサイドに走り込んでのシュートを連続で決めてリードを取り戻した。

第4クォーター(岐阜15-20埼玉)

ビンゴ・メリエックス選手

勝負の第4Q。3Qで一度逆転されたことを考えると、9点差はあってないようなもの。そんな心配をよそに開始15秒でビンゴが中央からの3ポイントシュートをいきなり沈める。さらにマイケルのディフェンスリバウンドから田中がシュートを決めリードは14点に。しかしB3初参戦のチームに負けられない埼玉も、素早いプレスから猛攻を仕掛ける。徐々に減っていくリード。残り1分でついに3点差、1本のシュートで追いつく距離に縮んだ。

するとここで、SWOOPSの勝利を願うブースターの声が一段と大きくなった。その声が後押しとなり貴重なシュートを決めたのはビンゴ。ゴール下で粘って2点を追加。さらに残り20秒の所で杉本慎太郎が決め試合を決定づけた。

ホーム戦勝利に沸くベンチ
勝ってブースターとハイタッチ

結果、74-70で岐阜SWOOPSが歴史的な勝利。初のホームゲームを白星で飾った。

要所でチームを引き締め、重要なシュートを決めたキャプテンの杉本慎太郎は「これだけたくさんのお客さんの前で勝ててうれしい。FC岐阜も勝っていたので岐阜を盛り上げることになったかな」と笑顔が緩んだ。

また攻守で存在感を示した伊藤良太は「ホームの勝利は心からうれしい。会場からパワーをもらった。『背が小さくても活躍できる』。子どもたちに夢を与える存在になれたら」とまっすぐな目で答える。

さらにこの試合でMVPに輝いた田中昌寛は、「クラブの時代から10年以上、たくさんの人に支えられて今日のホーム戦を迎えられた」と感慨深げ。「大人でも夢がかなうということを伝えたくてずっとバスケをやってきた。そうしたメッセージを伝えたい」と今後の目標を語った。

共同会見の後、クラブ時代に主将としてチームを引っ張ってきた田中と、それを受け継ぎ、いまキャプテンとしてチームを支える杉本慎太郎の二人に究極の質問をしてみた。「全クラ優勝の時と今回の勝利とどっちがうれしい?」すると、「全クラ優勝ですね、やっぱり最初に目標に据えて10年かかりましたもん」と田中。しかし杉本は「もちろん今回ですね」と思いはさまざま。ただ「いまやっと始まったばかり、これからが大事です」という言葉は一致した。そう、SWOOPSとしてプロのコートに立つという目標はこの日通過。これから次々と来る新しい壁を乗り越えていかないといけない。アマチュアとして「よく頑張ったね」という言葉も、今後はプロとして「頑張るのは当たり前」に変化する。成績が出なければ厳しい声をかけられることもあるだろう。それでも岐阜がスポーツを通して盛り上がるために頑張ってほしいと心から願う。

「SWOOPS」から「GIFU SWOOPS」へ。子どもや大人やお年寄りの夢になりえるチームができた。